お墓じまい後の選択肢:散骨を検討する際に知っておきたいこと

少子高齢化や価値観の多様化が進む現代において、「お墓じまい」を選択し、その後の供養方法として「散骨」を選ぶ方が増えています。故人の遺志の尊重、あるいは承継・管理の負担軽減といった理由から関心が高まる散骨は、遺骨を自然に還す、という側面を持つ新しい葬送の形です。
今回は、お墓じまいから散骨を検討している方へ、知っておくべき重要なポイントを解説します。


散骨とは?

 火葬後の遺骨を墓地などに埋葬せず、海や山などの自然環境に還す葬送方法の一つです。
近年では、自然志向の高まりや、お墓の承継・管理の負担軽減といった背景から、散骨を選ぶ人が増えています。形式にとらわれず、故人の想いや家族のライフスタイルに合わせた供養の選択肢として注目されています。


1. 散骨への関心と需要の高まり

増加する自由な供養の形
昔ながらの「お墓」の形に縛られず、故人の遺志や残された家族のライフスタイルに合わせた自由な供養の形として、散骨は広がりを見せています。
「管理の手間がない」ことや「自然に還ることができる」といった点に魅力を感じる方が多いようです。


2. お墓じまい後の散骨と「改葬許可」について

散骨は「改葬」に該当しないが、自治体への確認が必須
 お墓に埋蔵されているご遺骨を取り出し、別の墓地や納骨堂へ移すことを「改葬(かいそう)」といい、「墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)」に基づき、改葬許可申請が必要です。
しかし、お墓じまいをしてご遺骨を散骨する場合、ご遺骨を別の墓地等へ埋蔵するわけではないため、墓地埋葬法の改葬には該当せず、改葬許可申請は不要という見解が一般的です。

墓地、埋葬等に関する法律
第2条3項
この法律で「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。
第5条1項
埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。


【重要】自治体への確認と専門業者への相談
 この見解は自治体によって独自の解釈や運用があり、異なる場合があるため、実務においては、必ずお墓のある自治体(市町村役場の担当課)に確認を取ることが重要です。
また、散骨を業者に依頼する場合も、改葬許可の要否や手続きについて散骨業者に事前に相談し、適切なアドバイスと対応を確認しましょう。


散骨に関する法律の規定がないがゆえ、明確なルールが存在しないのが現状です。 このため、実務上では以下のような対応が求められることがあります。

  • 散骨業者から改葬許可証や埋蔵証明書の提出を求められるケースがあります。
  • 改葬許可は不要とする自治体が多い一方で、自治体によっては改葬許可が必要としているところもあります。また、改葬許可は不要であっても、散骨業者から提出を求められるケースがあり、その場合は便宜上改葬許可証を発行する自治体もあります。この場合の改葬許可申請は一般的なケースと異なるため、自治体との相談が必要となる個別案件として扱われる場合もあります。

 このような一般的な申請と異なる手続きにおいては、法律知識がないとスムーズに進めることができないこともあります。そのため、行政手続きの専門家である行政書士に依頼するのも一つの方法です。


3. 散骨に関する法的な位置づけと条例の規制

法律で規定されていない行為を無許可で行うリスク
 現在、散骨に関する明確な法律は存在しません。ただし、法務省は「葬送を目的とし、節度をもって行われる限り、刑法の遺骨遺棄罪(刑法190条)には該当しない」との見解を示しています。しかしながら、この見解は公式・非公式を問わず法務省が正式に示したものではない、あるいは特定の担当者の個人的な解釈に留まる、といった説もあり、その法的な拘束力には注意が必要です。


刑法第190条 
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。

 また、墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)は、埋葬や火葬に関する規定を中心とした法律であり、散骨という供養方法はそもそも想定されていません。そのため、散骨は既存の法律に明文化された規定がない供養方法であり、実施にあたっては社会的な慣習やガイドラインを遵守するなど、慎重な対応が求められます。
既存の法律に明文化された規定がないがゆえに、散骨を検討する上で見落としてはならない二つの大きな注意点があります。

  • 自治体の条例による規制・禁止

 一部の自治体では、地域の環境保全や漁業・観光への影響を考慮し、条例で散骨を規制・禁止しているところがあります。(例:北海道長沼町、埼玉県秩父市など)

  • 無許可で進めた場合のリスク

 個人で勝手に、他人の土地や近隣住民に配慮のない場所で散骨を進めた場合、土地の所有者や、生活に影響が出る可能性のある漁業関係者などから損害賠償請求などの法的トラブルに発展するリスクがあります。


専門業者に依頼するメリット
 こうしたトラブルを避けるためにも、散骨を検討する際は、自治体の条例やガイドラインを遵守し、周辺への配慮を徹底している散骨専門の業者に依頼することが、安心かつ円滑に進めるための最善策と言えます。専門業者は、適切な海域の選定や粉骨といった必要な手続きを代行してくれます。


4. 散骨を進める上での重要ポイント(実務まとめ)

散骨を後悔なく行うために、以下の実務上のポイントを押さえておきましょう。

  • 親族への理解を得る

 散骨は「お墓がない」供養方法であるため、後々のトラブルを避けるためにも、散骨を行う前に、親族間で十分に話し合い、全員の理解と同意を得ておくことが不可欠です。

  • ご遺骨は必ず「粉骨」する

 散骨する際は、ご遺骨をそのまま撒くのではなく、必ず粉骨(2mm以下のパウダー状)にする必要があります。粉骨せずに撒くと、ご遺骨を「遺棄」したとみなされ、刑法上の遺棄罪に問われる可能性があるためです。

  • 散骨場所の選定は慎重に

 海洋散骨でも、漁業権や地元の慣習に配慮が必要です。専門業者と相談し、節度をもって迷惑のかからない場所を選ぶことが求められます。


結びに

 お墓じまいと散骨は、故人を想う気持ちと、残された家族の未来を考える、前向きな「終活」の一環です。法的な側面、地域のルール、そして親族の感情にしっかりと配慮しながら、後悔のない供養の選択をしてください。